1兆円のスマホゲーム市場の今後予測

日本国内のスマホゲーム市場規模(ここではユーザが実際にお金を支払った金額)は凡そ1兆円という市場予測があります。2015-2016-2017と微増ながらほぼ横ばいなのでほぼ年間1兆円と捉えてよいかと思います。

www.nikkei.com

 

1兆円規模というのは他産業でどれくらいなのか、イメージが付きやすいところでいう

・鞄・袋物 11,000億円(小売りベース)

・時計 9,556億円(小売金額ベース)

・学習塾・予備校 9,570億円(事業所売上ベース)

・缶コーヒー 7,334億円

・レンタカー 6,480億円(ユーザ支払いベース)

という感じです。

visualizing.info

つまり何を言いたいかというと、結構な市場規模で生活に密着している産業に既になっているというところです。また事業者目線に立つと、また開発費用や運営費用の高騰は年々増加していますが、直近各所で聞く限り、

・開発費用はトータル3億円~10億円

・運営費用は月間0.1億円~1億円

という印象ですが後述する理由で一層上がると思っています。

ちなみに名前を聞いたことがある、というレベルのゲームは1本あたり大体が30人~100人以上の人が日夜運営に関わっています。

 

■今後どうなるのか

<市場規模に関して>

大方の予想通り、1兆円から大きく伸びることはないかと思います。何故ならば、大きく人口が増えない日本において、今後もスマホゲームで遊ぶ人達は既に今遊んでいる人達であると思うから。遊ぶゲームは変わるとしても、ゲームにかける金額や時間の総和は大きく変わることがないから、というのが理由です。(今までの生活スタイルを圧倒的に変えるようなゲームが出れば別です。)

ただ市場の構成要素は変わると思っていまして、より大きなゲームは大きくなり、小さなゲームは淘汰されていく気がします。なぜかというと、大きなゲームは開発段階から大きな開発費用をかけ、運営フェーズでは品質の高い運営にするべく、こちらもコストをかけます。開発費・運営費をどれだけかけられるか、といったレースがすでにスタートしています。運営フェーズではコンテンツの運営だけにとどまらず、マーケティングコストもかかるため、またここにどれだけのコストをかけていいかは各社の資金力との相談になるので、今後どれだけ投資できるのかという余力と投資判断ができるかに依存すると想像。

ユーザ目線に立てば、より品質の高いゲームで、ユーザに寄り添ってくれるきめ細やかな運営をしてくれるコンテンツで遊びたくなるのが自然で、中途半端な踏み込みで開発したゲームで遊ぶくらいであれば、今遊んでいるゲームを継続しながら、今以上に面白いと思えるゲームが出るのを待ち続けると思います。

現在月商1億円を超えるスマホゲームは凡そGooglePlayの売上ランキングで150位以上くらいのものがappleとGooglePlay併せて1億円くらいの肌感ですが、これは広く遍くゲームが市場にある中での限界数にかなり近づいているかもしれません。1年以内くらいに1億を超えるコンテンツは100本くらいになっているかもしれません。ただし、現在各社が開発しているアプリは今市場にあるものよりもコストをかけて作っているので、月商10億円を超えるコンテンツは今以上に増える可能性が高いです。

 

<事業者はどうするか>

開発費用はアートのリッチ化、コンテンツボリュームの増加を中心として今後も上がっていくことが予想されますし、運営費用に関しても「いかに長く自社のゲームで遊んでもらえるか」をベースと考えるとこちらも今後上がっていくことになることが想像できます。またゲームビジネスに関わっているとわかることですが、やはりヒットするかどうかというのが究極的にはリリースするまでわからない現状があり、またヒットの難易度が年々高くなっている感じがします。そうなると、収益性の悪いゲームはさっさと撤退し、より早く新しい売れるゲーム開発にシフトするのが自然です。赤字のタイトルは勿論ですが、収益が低いタイトルの運営に人を張り付かせるのであれば将来の大きな収益増にかけて新規タイトルを開発する、という選択を取るかと思います。(現実には運営している人全員が今の現場を離れて新作を作れるかというと、そうでもない問題もあるが)運営コストがかかる分、より早期に事業判断をする会社は増えると思います。

 

<早期にクローズされるゲームが増える>

事業者の一方的な判断で早期にクローズされるタイトルが増えると、そんな事情は関係のないユーザとしては非常に腹立たしいことになります。楽しんでこれからも遊び続けようと時間もお金もかけていたゲームが急にクローズする、というのは非常に辛い気持ちになります。ゲームによって課金する方の人数は非常に異なるもので、メジャーでないゲームであってもある人には非常に尊い大切なものであったりします。ユーザが辛い想いをするだけで済まされているのが現状ではありますが、1兆円という市場に対してユーザが守られていないというのが続くと社会問題化する可能性はあります。

今後より早期のクローズが顕著になり、社会問題化されるようになると、例えばリリースしてから何年は運営を継続しないといけないとか、課金の対価を十分に受け取っている場合はさておき、将来の一定期間までの運営を期待して課金した金額に関してはキャンセル可能になるとか、ユーザの保護を重視したガイドラインや事業ルールができる可能性はあると思います。むしろ今が全くなさすぎるだけで。

 

<運営期間コミットやユーザ保護が強化されるとどうなるか>

事業者としては新しくゲームをリリースするハードルが高くなります。出したら一定期間は運営しなければいけない=赤字になったとしても続ける必要がある。競合各社も赤字にならないようにより開発と運営によりコストをかけるようになります。なので今よりも開発運営コストがあがります。そうなると、

・薄利なゲームは他社に移管したり、クローズしたりする。

・その上で今まで以上にコストをかけて開発・運営をする

・そこまでの事業判断ができない会社はゲームを出せなくなる

・ゲームをリリースしつづけ、運営をしつづける会社だけが生き残る

・結果として市場で大きなゲームを出せる会社の数は現状より少なくなる

といったことになるのかと思います。

なので市場規模は大きく変わらずとも、市場構成は大きく変わり、事業者の数も今よりは減る可能性があるかな、というのと、大きなリスクをとってチャレンジをサポートする運営移管ビジネスというのはしばらくは伸びしろがあると思っています。スマホゲーム事業が新しい産業であるので、ルールが未整備なところが多いですが、1兆円という市場になってきた今、ユーザ保護の観点で色々な新しいルールができてくるというのは自然な気がします。